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【JMボイトレ #5】「息の量」と「息の圧力」は違う? ― 声量と持久力を決める声門下圧のしくみ

22 時間前
読了時間: 8分
この記事の結論 ・声の大きさを主に決めるのは、吐く「息の量」ではなく、声帯の下にかかる「息の圧力(声門下圧)」です。 ・たくさん息を吐くほど声が大きくなるわけではなく、息が声帯から漏れると、声はかすれて小さくなります。 ・「少ない息で、ちょうどいい圧力」を作れると、声量も持久力も上がります。


前回とのつながり


前回の#4では、押す力とブレーキのバランスで息の圧力を一定に保つことが「支え」だとお話ししました。


ここで、多くの人がつまずくポイントがあります。それは「息の量」と「息の圧力」を同じものだと思ってしまうことです。今回は、この2つの違いを体のしくみから整理します。



「息の量」と「息の圧力」は何が違うの?


答え:息の量は「どれだけ空気が流れるか」、息の圧力は「声帯の下でどれだけ押しているか」です。声の大きさに直接関わるのは圧力の方です。


よくある疑問はこうです。


「大きな声を出したいなら、たくさん息を吐けばいいんでしょ?」

実はこれが、声が大きくならない一番の原因になっていることがあります。



なぜ息を多く吐いても声は大きくならないの?


答え:声帯がしっかり閉じていないと、息は声にならずに漏れていくだけだからです。


ホースで考えてみましょう


水まき用のホースを思い浮かべてください。ホースの先を指で少しつまむと、同じ水の量でも、水は勢いよく遠くまで飛びますよね。


  • 蛇口から流れる水の量 → 息の量

  • ホースの中の水の押す力 → 息の圧力(声門下圧)

  • ホースの先をつまむ指 → 声帯の閉じ方


指でつままないまま蛇口を全開にしても、水はダラダラと流れるだけで、遠くまで飛びません。声も同じで、声帯が適度に閉じて息の通り道に「抵抗」があるから、圧力が生まれ、しっかりした声になります。


声門下圧が生まれるしくみ


#1でお話ししたように、声帯は閉じた状態で下から息に押され、開いたり閉じたりを繰り返して震えます。


このとき、声帯が閉じているから、その下に息がたまって圧力(声門下圧)が生まれます。声帯の閉じ方がゆるいと、息はすき間から逃げてしまい、圧力が十分に上がりません。


つまり、声の大きさや芯を作っているのは、


  • 下から押す息の圧力

  • その息を受け止める声帯の閉じ方


この2つの組み合わせです。吐く息の「量」を増やすだけでは、どちらも整いません。


3つの声のタイプ


息の量・圧力・声帯の閉じ方の組み合わせで、声は大きく3つのタイプに分けられます。


  • 息もれ声:声帯の閉じ方がゆるく、息の量は多いのに圧力が上がらない。かすれた、ささやくような声になり、息もすぐなくなります。

  • 押しつぶした声:声帯を強く閉じすぎ、圧力も上げすぎている。硬く、苦しそうな声になり、喉が疲れます。

  • バランスのいい声:声帯が適度に閉じ、ちょうどいい圧力で、少ない息が効率よく声に変わる。響きがあり、長く歌っても疲れにくい声です。


ボイトレで目指すのは、3つ目の「少ない息で、ちょうどいい圧力」の状態です。


つまり、こういう流れです


声帯が適度に閉じる ↓ その下に息がたまり、圧力(声門下圧)が生まれる ↓ 少ない息で、声帯が効率よく震える ↓ 声量があり、息も長持ちする声になる


歌ではどんな違いが出るの?


答え:サビの声量、ロングトーンの長さ、ささやく歌い方など、息の「使い方の効率」が問われる場面で差が出ます。


サビで声量を上げたいとき


息を大量に吐いて大きくしようとすると、すぐに息切れし、声もかすれます。声量は、圧力と声帯の閉じ方を少しずつ上げることで出すのが効率的です。


ロングトーンが続かないとき


「肺活量が足りない」と思いがちですが、実は声帯から息が漏れていて、同じ時間でも多くの息を使ってしまっていることがよくあります。


ウィスパーボイス(息まじりの声)


K-POPのバラードやR&B系の曲では、わざと息を混ぜた声を使うこともあります。これは「息もれ声」を表現としてコントロールしている状態です。まず「息を混ぜない声」が出せるからこそ、必要な場面で息を混ぜる表現が選べるようになります。


K-POPのダンスボーカル曲


踊りながら歌うと、どうしても息が足りなくなりがちです。少ない息で声を出せる効率のいい発声ができていると、激しく動いたあとでもサビを最後まで歌いきれます。


このしくみを知らないと起きる問題


「もっと声を出して」と言われて、ひたすら息を強く・たくさん吐こうとする。これはとてもよくある失敗です。


息を多く吐くほど、声帯はその勢いに押されて閉じにくくなり、息もれが増えることがあります。すると声はかすれ、さらに息を吐こうとする悪循環になります。逆に喉で無理に止めようとすると、今度は押しつぶした声になってしまいます。大事なのは息の「量」ではなく「効率」なのです。



JOYMUSEのレッスンでよく見るパターン


JOYMUSEのレッスンで「もう少し大きな声で」とお願いすると、多くの生徒さんは息の量を一気に増やします。声に「ハー」という息の音が混ざり、5秒ほどで息が足りなくなってしまいます。


本人は「肺活量がない」と思っていることが多いのですが、実際には息がたくさん漏れていることがほとんどです。


声帯がちょうどよく閉じる感覚がつかめると、同じ息の量でも声がはっきりし、ロングトーンの長さが大きく伸びる方が多くいます。JOYMUSEでは、まず「息の音が混ざっていないか」を一緒に確認するところから始めます。



自宅でできる練習:息の「効率」を上げる3ステップ


この練習の目的:息の量ではなく、少ない息で安定した圧力を作る感覚を身につけること。


各ステップ3回ずつ、1日3分ほどで大丈夫です。


ステップ1:「スー」と「ズー」の長さを比べる(息もれチェック)


楽に息を吸って、「スー」とできるだけ長く吐き、秒数を測ります。次に同じように吸って、「ズー」と声を出しながら長く伸ばし、秒数を測ります。


→ 確かめているのは声帯からの息もれ。声帯がしっかり閉じていれば、「ズー」は「スー」と同じくらい長く続きます。「ズー」の方がはっきり短いなら、声を出しているときに息が漏れているサインです。


ステップ2:リップロール(少ない息で一定の圧力)


唇を軽く閉じ、「ブルルル」と唇を震わせながら、楽な高さで5秒伸ばします。唇が止まらないように、息を一定に送り続けます。


→ 鍛えているのは少ない息で一定の圧力を保つ感覚。唇がちょうどいい抵抗になるので、息を出しすぎず、止めすぎない状態を体で覚えられます。


ステップ3:「ンー」から「アー」へ(声帯の閉じ方を整える)


口を閉じて「ンー」とハミングし、鼻や唇のあたりが軽くビリビリ響くのを感じます。そのまま口を開けて「ンー → アー」と声をつなげます。


→ 鍛えているのは息が漏れない、ちょうどいい声帯の閉じ方。ハミングは息もれしにくい声なので、その状態のまま母音に移ることで、効率のいい声を覚えます。



できているかを自分で確かめる方法


スマホの録音とストップウォッチを使って、次の点を確認しましょう。


  • ステップ1で「ズー」が「スー」の半分以下になっていないか:大きく短いなら息もれが多いサインです。ステップ3のハミングを多めに練習しましょう。

  • ステップ2でリップロールがすぐ止まらないか:止まるなら息が弱すぎるか、唇に力が入りすぎています。唇の力を抜いて、息を一定に送りましょう。

  • ステップ3で「アー」に「ハー」という息の音が混ざっていないか:録音して聞くとわかりやすいです。混ざっていたら、ハミングの響きをキープしたまま口を開ける意識で。

  • 喉が締めつけられる感じがないか:苦しさがあれば、閉じすぎ・押しすぎです。少し力を抜いて、楽に出せる声を探しましょう。


深い呼吸を続けて少しクラッとしたら、休憩してから再開してくださいね。



よくある質問


Q. 肺活量を増やせば歌がうまくなりますか?


A. 肺活量は多いに越したことはありませんが、歌ではそれよりも「息を効率よく声に変える力」の方が大切です。息がもれない発声ができると、今の肺活量のままでも長く歌えるようになります。


Q. 声が小さいのは息が弱いからですか?


A. 息の圧力が足りないこともありますが、多くの場合は声帯の閉じ方がゆるく、息が漏れていることが原因です。息を強くする前に、まず息もれがないかを確認しましょう。


Q. 息まじりの声(ウィスパーボイス)は悪い声ですか?


A. 悪い声ではありません。曲の雰囲気に合わせて使えば、とても魅力的な表現になります。ただし、息を混ぜない声も出せることが大切です。どちらも選べる状態が理想です。


Q. リップロールができません。


A. 唇に力が入りすぎているか、息が弱すぎることがほとんどです。両手の人差し指で頬を軽く持ち上げると、唇がゆるんで震えやすくなります。



今日の一行まとめ


息の量と圧力の違いを知る理由は、声量も持久力も「たくさん吐く」ではなく「少ない息で、ちょうどいい圧力」を作ることで生まれるから。


次回予告


【JMボイトレ #6】息もれ声と押しつぶした声 ― 声帯の「閉じ方」をコントロールするしくみ



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この記事を書いた人


JM|K-POP専門ボーカルスクールJOYMUSE(ジョイミューズ)トレーナー


韓国と日本でボーカル指導を行う韓国人トレーナー。スタジオでの対面レッスンとオンラインで、日本語・韓国語のレッスンを行っています。発声の「なぜ」を体のしくみから伝えることを大切にしています。

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