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【JMボイトレ #2】腹式呼吸はなぜ必要? ― 胸式呼吸との違いを体のしくみから解説

4 日前
読了時間: 8分
この記事の結論 ・胸式呼吸で深く吸おうとすると、首や肩の筋肉が働き、喉のまわりまで固くなりやすくなります。 ・腹式呼吸は、肩や首を使わずに深く吸えるので、喉がリラックスしたまま歌い始められます。 ・だから歌では、腹式呼吸を「吸い方の基本」にします。


前回とのつながり


前回の#1では、「声のエネルギーはすべて息から生まれる」というお話をしました。


息が声の動力なら、次に気になるのは「その息を、どうやって吸うか」です。今回は、ボイトレで必ず出てくる「腹式呼吸」が、なぜ歌に必要なのかを体のしくみから見ていきます。



腹式呼吸はなぜ歌に必要なの?


答え:首や肩に力を入れずに深く吸えるので、喉がリラックスしたまま声を出せるからです。


よくある疑問はこうです。


「腹式呼吸がいいって聞くけど、胸で吸っても空気は入るよね? 何が違うの?」

その通りで、どちらの呼吸でも空気は肺に入ります。違うのは「どの筋肉を使って吸うか」です。そしてその違いが、喉の状態を大きく変えます。



胸式呼吸と腹式呼吸は何が違うの?


答え:肺を広げる方向が違います。胸式は「上と前」に、腹式は「下」に広げます。


部屋を広くする2つの方法で考えてみましょう


肺を「部屋」だと想像してください。部屋を広くして空気をたくさん入れるには、2つの方法があります。


  • 天井を持ち上げる → 胸式呼吸

  • 床を下げる → 腹式呼吸


天井を持ち上げるには、上から引っ張る力が必要です。体でいうと、この「上から引っ張る役」をするのが首や肩の筋肉です。


一方、床を下げる役をするのは、肺の下にある横隔膜(おうかくまく:胸とお腹を仕切っているドーム型の筋肉)です。首や肩の力はほとんどいりません。


胸式呼吸で起きていること


胸式呼吸は、肋骨(ろっこつ)を持ち上げて胸を広げる呼吸です。普段の軽い呼吸なら問題ありません。


でも、歌のために「たくさん吸おう」とすると、胸だけでは足りず、首や肩の筋肉(呼吸補助筋:こきゅうほじょきん)まで動員されます。肩が上がるのはそのサインです。


これらの筋肉は、喉のすぐ近くについています。首や肩が固まると、喉頭(こうとう:声帯を収めている器官)のまわりまで緊張しやすくなります。


腹式呼吸で起きていること


腹式呼吸では、息を吸うときに横隔膜が下がります。すると肺が下に向かって広がり、空気が入ります。


横隔膜が下がると、その下にある胃や腸が押されて前や横に移動します。だからお腹がふくらんで見えるのです。


ここでよくある勘違いを1つ。お腹に空気が入っているわけではありません。空気が入るのはあくまで肺です。お腹がふくらむのは、横隔膜に押された内臓が動いた結果です。


また、歌の腹式呼吸は「お腹だけ」を動かすものではありません。下のほうの肋骨まわりが、横にも広がる感覚があるのが自然です。


つまり、こういう流れです


胸式で深く吸う ↓ 首・肩の筋肉が働く ↓ 喉のまわりが固くなる ↓ 声が締まりやすい

腹式で深く吸う ↓ 横隔膜が下がり、首・肩は楽なまま ↓ 喉がリラックスした状態で声を出せる


歌ではどんな違いが出るの?


答え:高音、ブレスの音、長いフレーズなど、歌の大事な場面で「喉の余裕」の差が出ます。


高音の直前


高音の前に肩を上げて「ハッ」と吸うと、首が固まった状態で高音に入ることになります。喉に余裕がなく、声が細く締まりやすくなります。


ブレスの音


胸や肩で急いで吸うと、「ヒュッ」「ハッ」という大きな吸気音が入りがちです。腹式で吸えると、短い時間でも静かに深く吸えます。


長いフレーズ


深く吸えた息は、そのぶん長く使えます。フレーズの途中で息が足りなくなる回数が減ります。


K-POPのダンスボーカル曲


ダンスをしながら歌うときは、肩や腕を大きく動かします。もし肩で息を吸っていたら、振り付けと呼吸がぶつかってしまいます。動きながらでも安定して歌えるのは、呼吸を肩ではなく体の下のほうで行っているからです。


このしくみを知らないと起きる問題


「たくさん吸わなきゃ」と思うほど、肩を大きく上げて吸ってしまう。これはとてもよくある失敗です。


本人は「深く吸えた」と感じていても、実際には首と肩が固まり、喉が締まった状態で歌い始めています。「たくさん吸う」より「どこで吸うか」の方が大事なのです。



JOYMUSEのレッスンでよく見るパターン


JOYMUSEのレッスンで「大きく息を吸ってください」とお願いすると、多くの生徒さんがまず肩を上げます。


鏡の前でもう一度吸ってもらうと、本人もびっくりするほど肩が上がっていることがよくあります。毎日していることなので、自分では気づきにくいんです。


でも、吸う場所が下に移ると、同じフレーズでも声の出だしが楽になる方が多くいます。JOYMUSEでは、まず「肩が上がっていないか」を一緒に確認するところから始めます。



自宅でできる練習:腹式呼吸の「場所」を見つける3ステップ


この練習の目的:肩や首を使わずに、体の下のほうで吸う感覚を見つけること。


各ステップ3〜5回ずつ、1日2〜3分で大丈夫です。


ステップ1:仰向けでお腹に本を乗せる(横隔膜の動きを感じる)


仰向けに寝て、お腹の上に軽い本を1冊乗せます。鼻からゆっくり吸って、口からゆっくり吐きます。吸うと本が上がり、吐くと本が下がればOKです。


→ 鍛えているのは横隔膜が下がる感覚。寝ていると肩や首を使いにくいので、自然な腹式呼吸を体験できます。


ステップ2:立って、胸とお腹に手を当てる(肩を使わない感覚)


立って鏡の前に立ち、片手を胸の上(鎖骨の下)、もう片方の手をおへその少し上に当てます。4カウントで吸って、6カウントで吐きます。


→ 鍛えているのは首や肩を使わずに吸う感覚。胸の手はほとんど動かず、お腹の手と脇腹が前と横に広がるのが目標です。


ステップ3:2つの吸い方で声を比べる(喉への影響を感じる)


まず、わざと肩を上げて吸い、楽な高さで「アー」と5秒伸ばします。次に、ステップ2の吸い方で吸い、同じ「アー」を伸ばします。


→ 確かめているのは吸い方が喉の状態を変えること。2つの声を録音して聞き比べると、違いがよくわかります。



できているかを自分で確かめる方法


鏡とスマホの録音を使って、次の点を確認しましょう。


  • 吸うときに肩が上がっていないか:鏡で見て、肩の高さが変わらなければOKです。

  • 首の筋が浮き出ていないか:吸ったときに首の前や横に筋が浮いたら、首の筋肉を使っています。

  • 吸う音が静かか:「ヒュッ」と大きな音がするときは、喉や胸で急いで吸っています。

  • ステップ3で2つ目の声の方が楽か:喉が楽に感じる、声が柔らかく聞こえるなら、吸い方の違いを体が感じ取れています。


深い呼吸を続けて少しクラッとしたら、休憩してから再開してくださいね。



よくある質問


Q. 胸式呼吸は悪い呼吸なんですか?


A. 悪いわけではありません。普段の生活では誰もが胸でも呼吸しています。歌で問題になるのは、深く吸おうとして首や肩に力が入ることです。歌うときは、腹式を中心に、下の肋骨まわりも自然に広がる呼吸を目指しましょう。


Q. お腹に空気が入るんですか?


A. いいえ、空気が入るのは肺だけです。横隔膜が下がって内臓が押されるので、お腹がふくらんで見えます。


Q. 寝ているとできるのに、立つとできません。


A. よくあることです。立つと姿勢を保つための力が加わり、肩や胸で吸うクセが出やすくなります。まず寝た状態で感覚をつかみ、次に座って、最後に立って、と段階的に練習しましょう。


Q. お腹をへこませたり、固めたりした方がいいですか?


A. 吸うときにお腹を固めると、横隔膜が下がりにくくなります。まずは力を抜いて、自然にふくらむ感覚をつかみましょう。吐くときの体の使い方は、このシリーズの#4で詳しく扱います。



今日の一行まとめ


腹式呼吸をする理由は、首や肩の筋肉を使わずに深く吸えるので、喉がリラックスしたまま歌い始められるから。


次回予告


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この記事を書いた人


JM|K-POP専門ボーカルスクールJOYMUSE(ジョイミューズ)トレーナー


韓国と日本でボーカル指導を行う韓国人トレーナー。スタジオでの対面レッスンとオンラインで、日本語・韓国語のレッスンを行っています。発声の「なぜ」を体のしくみから伝えることを大切にしています。

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