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【JMボイトレ #1】歌はなぜ「息で弾く楽器」なの? ― 声が生まれる3つのしくみ

5 日前
読了時間: 8分
この記事の結論 ・声は「息(動力)→ 声帯(振動)→ 声道(響き)」の3つの部品で生まれます。 ・声帯は筋肉で1回ずつ動かすのではなく、息の流れで震えます。 ・だからボイトレは、すべての出発点である「呼吸」から始めます。


はじめに:JMボイトレ100とは


こんにちは。K-POP専門ボーカルスクールJOYMUSE(ジョイミューズ)のトレーナー、JMです。


「JMボイトレ100」は、全100回で発声の基礎から表現までを学ぶシリーズです。このシリーズでは、練習のやり方よりも「なぜその練習をするのか」を、体のしくみから説明します。


理由がわかると、練習が「なんとなく真似する」から「今ここを鍛えている」に変わります。第1回は、100回すべての土台になる話です。



ボイトレはなぜ呼吸から始めるの?


答え:声のエネルギーは、すべて息から生まれるからです。


声は喉だけで出しているわけではありません。肺から出る息が声帯を震わせ、その音が喉や口の中で響いて、はじめて歌声になります。この流れの一番最初が「息」です。だから最初に呼吸を整えます。


よくある疑問はこうです。


「声って喉で出すものでしょ? なんでまず呼吸なの?」

この疑問に答えるために、声がどうやって生まれるのかを順番に見ていきましょう。



声はどうやって生まれるの?


答え:「息」「声帯」「声道」の3つの部品がつながって生まれます。


  1. 動力:肺から出る息

  2. 振動:声帯(せいたい:喉の中にある左右2枚のひだ)

  3. 響き:声道(せいどう:声帯から唇・鼻までの空間)


風船で考えるとわかりやすい


膨らませた風船の口を、両手でつまんで横に引っ張ってみてください。「ブーッ」と音が鳴りますよね。


  • 中の空気が外へ出ようとする → 息(動力)

  • 引っ張られたゴムの口が細かく震える → 声帯(振動)


人の声も、基本はこれと同じです。ただし人には、風船にはない部品があります。それが声道(響き)です。



息は声帯にどう働くの?


答え:閉じた声帯の下に息がたまり、その圧力が声帯を震わせるエネルギーになります。


息を吐くとき、閉じた声帯の下に空気がたまって、押す力が生まれます。この力を声門下圧(せいもんかあつ:声帯の下にたまる息の圧力)と呼びます。


声門下圧とは、声帯の下にたまる息の圧力のことです。声の大きさにも、音の高さにも関わる、声のエネルギー源です。



声帯はどうやって震えるの?


答え:声帯は息の圧力で押し開かれ、また閉じる動きを、1秒間に何百回も繰り返して震えます。


声帯は、喉仏のあたりにある喉頭(こうとう:声帯を収めている器官)の中にあります。大人で1〜2cmほどの小さなひだです。


声帯はこんなふうに動きます。


  1. 下にたまった息の圧力で、声帯が押し開かれる

  2. 息が通り抜ける

  3. 声帯自身の弾力と、流れる空気が内側へ引き寄せる力で、また閉じる

  4. また圧力がたまって、押し開かれる


この開閉の回数が音の高さになります。話し声の目安は、男性で1秒に約100回前後、女性で約200回前後です。たとえば「ラ(A4)」は1秒に440回です。


ここで一番大事なポイントです。声帯は、1回1回を筋肉で動かしているわけではありません。筋肉は声帯の長さや閉じ具合を「設定」します。実際に震わせているのは、流れる息です。


だから、息が安定しないと、振動も安定しません。



声の「色」はどこで決まるの?


答え:声帯から上の空間「声道」の形で決まります。


声帯で生まれた音だけを取り出すと、実は小さくて「ビーッ」というブザーのような音です。この音が、喉の奥・口の中・鼻へと続く声道を通る間に、ある音は強められ、ある音は弱められます。こうして「ア」「イ」などの母音や、明るい・温かいといった声の色が生まれます。


  • 音の高さを決めるのは → 声帯

  • 母音や音色を決めるのは → 声道


この分業を、専門的には「ソース・フィルター理論」と呼びます。詳しくはシリーズ第4章「共鳴」で扱います。


3つの部品のつながり


息が一定に流れる ↓ 声帯が規則正しく震える ↓ 声道がその音を整えて響かせる ↓ 聞き手に届く歌声になる

最初の部品が不安定なら、その後ろもすべて不安定になります。これが「ボイトレは呼吸から」と言われる本当の理由です。



歌ではどんな違いが出るの?


答え:フレーズの終わり、サビの盛り上がり、最後の一音など、歌の大事な場面ほど「息の安定」の差が出ます。


長いフレーズの終わり


後半で息が足りなくなると声門下圧が下がり、声が細くなって音程も下がりやすくなります(フラット)。


サビの盛り上がり


大きな声は「息の圧力」「声帯の閉じ方」「響き」の組み合わせで生まれます。喉の力だけでは大きくなりません。


バラードの最後の一音


小さく長く伸ばす音ほど、少ない息を一定に流し続ける力が試されます。


K-POPのダンスボーカル曲


激しい振り付けの直後でも、サビの頭がブレずに聞こえる歌があります。その裏には、短い間奏で必要な息を入れて、それを一定に使う設計があります。動いても崩れない歌は、まず「動力」が安定しているんです。


このしくみを知らないと起きる問題


「声が小さい」と言われて、喉に力を入れて押し出そうとする。これはとてもよくある失敗です。


喉に力を入れると、振動する部品である声帯そのものを締めつけてしまいます。音色は硬くなり、数曲で声がかすれることもあります。原因は喉ではなく、息の使い方にあることが多いのです。



JOYMUSEのレッスンでよく見るパターン


JOYMUSEのレッスンで、初めて来た生徒さんに一番多いのが「大きく歌おうとして喉に力が入る」パターンです。


このあと紹介するステップ2をやってもらうと、多くの方が「ハー」から「アー」に変わる瞬間に、喉がグッと詰まります。本人は「ちゃんと声を出そう」としているだけなんです。


ここで「声は息で震えるもの」と知ってもらうと、出し方が変わり始めます。声を押し出すのではなく、息に声を乗せる感覚です。JOYMUSEでは最初のレッスンで、まずこの感覚を一緒に確かめます。



自宅でできる練習:「息→振動→響き」3段階トレーニング


この練習の目的:声の3つの部品を、1つずつ順番に体で感じること。


各ステップ3回ずつ、1日1〜2分で大丈夫です。


ステップ1:「スー」で息だけを10秒(動力を感じる)


歯を軽く合わせて、「スー」と息を吐きます。10秒間、音の大きさが最初から最後まで変わらないようにします。


→ 鍛えているのは①動力。息を一定の圧力で送り続ける感覚です。


ステップ2:「ハー」から「アー」へ(振動を感じる)


まず声を出さずに、ため息のように「ハー」と息だけを吐きます。息の流れを止めずに、途中から自然に「アー」と声に変えます。


→ 鍛えているのは②振動。同じ息が声帯に当たって声に変わる瞬間を感じます。喉で押すのではなく、息が声帯を震わせていることを確かめます。


ステップ3:同じ高さで母音だけ変える(響きを感じる)


楽な高さで「イー → エー → アー → オー → ウー」と、息を止めずに続けます。音の高さと息の量は変えず、口の形だけを変えます。


→ 鍛えているのは③響き。声帯は同じなのに、声道の形が変わると声の色が変わることを体験します。



できているかを自分で確かめる方法


スマホで録音しながら、次の点を確認しましょう。


  • 喉に軽く手を当てる:ステップ1では震えず、ステップ2で「ア」に変わった瞬間に震え始めればOK。息で声帯が震え始めた証拠です。

  • ステップ1の最後の3秒で音が弱くなる:最初に息を使いすぎています。10秒分を最初から配るイメージで。

  • ステップ2で「グッ」と詰まる、咳払いのような音がする:喉で声を始めています。もっとため息に近く、力を抜いてみましょう。

  • ステップ3で母音を変えると、音の高さや大きさまで変わる:あごや舌に余計な力が入っているサインです。口の形だけをゆっくり変えてみてください。


深い呼吸を続けて少しクラッとしたら、休憩してから再開してくださいね。



よくある質問


Q. ボイトレは何から始めればいいですか?


A. 呼吸から始めるのがおすすめです。声のエネルギーはすべて息から生まれるため、呼吸が安定すると、音量・声の伸び・音程のすべてが安定しやすくなります。


Q. 喉で声を出すのはダメなんですか?


A. 声帯は喉の中にあるので、喉を使うこと自体は自然です。問題になるのは、喉の筋肉に力を入れて声を押し出すことです。声帯を締めつけて、硬い声やかすれの原因になります。


Q. 呼吸の練習だけで歌はうまくなりますか?


A. 呼吸は土台ですが、それだけでは完成しません。声帯の使い方(発声)、声の響かせ方(共鳴)も順番に整えることで、歌声として仕上がります。このシリーズでは、その順番で学んでいきます。


Q. 1日どれくらい練習すればいいですか?


A. 今回の練習なら1日1〜2分で十分です。長時間を週に1回より、短い時間を毎日続けるほうが、体の感覚は身につきやすくなります。



今日の一行まとめ


呼吸から練習する理由は、声のエネルギーはすべて息から生まれ、声帯はその息で震える楽器だから。


次回予告


【JMボイトレ #2】「お腹で呼吸する」って何がいいの? 胸式呼吸と腹式呼吸は何が違う?



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この記事を書いた人


JM|K-POP専門ボーカルスクールJOYMUSE(ジョイミューズ)トレーナー


韓国と日本でボーカル指導を行う韓国人トレーナー。スタジオでの対面レッスンとオンラインで、日本語・韓国語のレッスンを行っています。発声の「なぜ」を体のしくみから伝えることを大切にしています。

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